Cotton Time
自分のベッドの次に馴染んでいるシーツは、三井先輩の匂いがする。
そこに仰向けになったわたしは、覆い被さって来る大きな身体を重みと共に受け止めた。
触れるだけから始まったキスは次第に深くなり、唇が離れようとする度どちらからともなく再び求める。やがて首筋から下りて胸元で遊ぶ舌は、容赦なくわたしを翻弄した。
同時に、長い指が更なる奥へ訪れる。徐々に速さを増す動きに喘ぎ続けていれば、指が抜かれると同時にそれ以上の質量が侵入した。
「――――ん……ッ」
繋がった場所が熱い。
手のひらや唇を重ねた時も、身体に熱は点った。けれど、それとは全然違う。
自分の中で響く律動は甘く疼き、声にならない吐息が零れる。唯一紡げたのは、ぼやけた視界に映った人の名前だけだった。
「みつい……せんぱい……っ」
そして首にしがみ付くように手を伸ばせば、応えるかのごとく両腕で抱きすくめられる。
ぴたりと胸が重なって、わたしのうなじへ顔を埋めた先輩の息が首筋へかかる。そんな柔らかな刺激にも耐えられず、ぎゅっと目を瞑ったまま頭の中が真っ白になった。
「……は、ぁ」
ひとつだった身体を解き、向き合った格好で横たわる。
いつも体育館で見ていた、綺麗なフォームを描くしなやかな腕。それが今は優しくわたしを包み込んでいて、くすぐったい気持ちで広い胸に頬を寄せた。
「凄い音してる」
「たりめーだろ」
やや掠れた低い声は妙に艶を含んで、先輩に負けない程鼓動が高鳴る。自分の心音がうるさすぎて、それを落ちつけようとわたしは長い息を吐いた。
「どした」
「心臓が破裂しそう」
「……無理させたか」
「ううん。そんなことない」
汗ばんだ肌はまだ熱を帯びて、ぴたりとくっ付いた頬を通じ伝わって来る。もうどちらの体温なのか分からなくなりそうだった。
「何だかうとうとしてきちゃった」
「眠かったらそのまま寝ていいぞ」
柔らかな声音で子どもをあやすように、先輩の指が優しくわたしの髪を梳く。その気持ち良さに目を瞑ると、あっという間にとろりとしたまどろみの中へ落ちて行った。